第1章 突然の呼び出し
団長に想いを寄せ始めたのは、
ここに来てすぐのことだった。
調査兵団の料理人の試験に受かり、
仕事始めの日のこと。
アンが緊張した面持ちで
食堂のドアを開けようとしたその時、
「君がアンかい?」
穏やかな声で話しかけてきたエルヴィンは、
優しい表情でアンに笑いかけた。
エルヴィンを見たのは、
これが初めてではない。
兵団が調査に出る際、
一度だけ見送りに行ったことがあり、
その時に兵団の先頭で
勇ましい声を上げているのを見た。
表情はまさに
“鬼のような形相”そのもので、
直視することすらできなかった。