第6章 執着と後悔
それから数週間後、アンは珍しく
食堂で声を掛けてきたミケに連れられて、
使われていない訓練部屋に来た。
「最近俺の部屋に来ないが、
もうあいつのことはいいのか。」
ミケのその問いかけに、
少しの怒りを覚える。
もういいのか?
いい訳がない。
一年近く想い続けた相手を、
そんな簡単に諦めたくない。
……だけど、他に好きな人がいる相手を
しつこく想い続けるような
執着心を持ちたくない。
恋愛でも仕事でも、無駄な執着はしない。
自分は元々そういう性格だ。
「………もういいです。」
アンはそれだけ言うと、口を噤んだ。
これ以上言葉を発したら、
きっとミケを責めてしまうだろう。
だが、自分はミケを責められる立場ではない。