第1章 突然の呼び出し
「……アン。
明日の晩、俺の部屋に来い。」
昨晩食堂で、ミケにたった一言、
それだけ声を掛けられ
分隊長相手に断れる訳もなく、
外面上は二つ返事で了承してしまった。
仕事はそれなりに真面目にしている。
まだ調査兵団の料理人になってから
半年しか経っていないが、
仕事をサボったことは勿論ないし、
夜な夜な料理の勉強だってしている。
20歳という若さで
兵団の料理人になれたのも、
この真面目さあってのものだ、と自負していた。
だが今回ミケに呼び出されたことで、
不安な気持ちを覚えずにはいられなかった。
自分は気付かないうちに、
何か大きな失態を犯したのかも知れない……
憂鬱な気持ちは、
いくらため息を吐いても出て行かなかった。