第2章 匂いと誘惑
自意識過剰だ。
これ以上を求めたくなる?
匂いを嗅がれているだけで?
好きな相手でもないのに?
そんなことある訳がない。
私のことをどれだけ淫乱な女だと思ってるんだ。
心外にも程がある。
心の中は腹立たしさが支配しつつあったが、
「ならいいだろう。」
そう言ったミケが耳元の匂いを嗅ぎ始めた時、
その腹立たしさが掻き消されたと同時に
体温が一気に上昇した。
耳元から聞こえるミケの不規則でも、
どこか律動的な息遣いが、
心地良く身体を刺激する。
思わず声を漏らしてしまいそうになり、
それを隠すように慎重に息を吐く。
ミケは気にする様子もなく
耳元から鎖骨にかけて、
ゆっくり匂いを嗅いでいたが、
「どうした?
息が上がっているようだが。」
と、鎖骨辺りに顔を近付けたまま
アンを見入った。
「……そんなことないです。」
思わず強がってそう言ったものの、
もう隠しきれない程に呼吸が弾む。