第2章 匂いと誘惑
「いえ、そういう訳ではないんですが……」
分隊長に、止めて欲しいか。
と聞かれ、止めて欲しいです。
なんて答えられる程、自分の肝は座っていない。
そんなこと、ミケにだって
わかることじゃないのか?
そもそもやめる気なんてないんじゃ……
そう思ったその時、
ミケの手がアンの腰に優しく触れ、
ゆっくり引き寄せられた。
一気に鼓動の音が激しくなり、
それを誤魔化すかのように
「あ、あの。」
と、ミケに声を掛けるが
「他の部分も嗅ぎたいんだ。
駄目なのか?」
ミケは冷静な声のまま
アンに問いかけた。
「いや、でも、ちょっとこれって」
「これ以上を求めたくなるから、
今のうちに俺を止めたいのか?」
自分の言葉を遮った
ミケの自信過剰な物言いに、
アンは一瞬言葉を失うが
それと同時に若干頭に血が上るのを感じ、
「いや。それはないです。」
と、負けじと冷静な声で言い放った。