第2章 匂いと誘惑
ミケは少しアンから離れ、
何かを考える様に腕を組むと
「匂いを嗅いでもいいか?」
そう言ってアンの目を見入った。
……ん?
それってそんなに
改まって聞かれるものだったの?
と言うか、匂い嗅ぐためだけに
部屋に呼ぶってどうなの……?
初対面の人に対して、
その場で有無を言わさず匂いを嗅ぐ
って噂しか聞いてなかったけど。
「おい、いいのか?駄目なのか?」
「は、はい!いいです!」
突然耳元で急かされ、
思わず許可する言葉を発してしまった。
だがどうせここで断る勇気なんてない。
気が済むまで匂いを嗅いでもらって、
さっさと退散しよう。
ミケはアンの首筋に顔を近付けると、
早速スンスンと匂いを嗅ぎ始める。
首元に一瞬温かい空気が通り抜け、
思わず身体をビクつかせた。