第9章 牛おらふくん目線2
僕の一日は、飼い主さんの「おはよう」から始まる。
朝が来て、僕たちMOBに挨拶をして回る飼い主さんは、カゴの鍵を開けてどこかに行く。でも僕はカゴの外へ冒険に出る前に、やらなきゃいけないことがあるからすぐには出ない。いっぱい用意してくれたバケツに、いっぱい牛乳を入れるお仕事があるからね。
で、バケツが牛乳でいっぱいになると、飼い主さんに教える。こっちの言葉はあまり伝わらないみたいだから、モ〜って鳴いてみると飼い主さんが気づいてくれる。飼い主さんは、やっぱり戻って来た。
「わ、おらふくん、今日もこんなにいっぱいありがとね〜」
えへへ、すごいでしょ。
僕がすっと姿勢をよくすると、飼い主さんは気持ちのいいところを撫でてくれる。僕は飼い主さんのこの優しい手が好きだ。
本当はずっとこうして欲しいけれど、飼い主さんも忙しくて、じゃあまたねと僕から離れてどこかに行った。僕はまだまだ一緒にいたいから、MOB用スロープを歩いて飼育カゴから出た。
僕は飼い主さんのそばが好き。飼い主さんが台所と呼ばれるところに行って何かしながら、ふんふふーんって歌ってる声がいつも楽しそうなのを聞いている。
「わ、牛おらふくん、そんなところにいたんだね〜」
と飼い主さんは僕を上手に避けて何かをテーブルの上に置いた。とてもいい匂いがするから食べたくなるけど、ここは我慢だ。
「ふふ、いい子だね」
飼い主さんがまたそうやって言うから、いやいや、僕は全然食べようとしていないから、と言い訳をしてみるけど、飼い主さんはニコニコするばかり。まるで僕の心の中をお見通ししているみたいだ。