第4章 日向ぼっこ
帽子選びの後の出来事から艦に戻るまで、ローくんとろくに目を合わせれなかったわたしは、寄港した1日目に抱いた疑問の答えをイッカクちゃんからもらったことで何となくホッとして、それからは普通に接することが出来た。
その、性関連で踏み込んだ話をすることにも免疫が無いわたしとしては突然のあの発言は爆弾みたいなものだった。
今まで新聞でしか知り得なかったローくんとの接触は正直に言って、嬉しい。
写真じゃない、生身だからこそ、体温が伝わるし感触もある。それが限りなく嬉しいのだけれど、それと同時にあまり人と親密な接触をしてこなかったわたしとしてはそういった接触に対応出来ないという……そしてそれを態度にモロに出してしまうという情けなさ。
もうお互い子供じゃないんだもの。
なんとなく、子供の頃の距離感でいるけれど、大人になった今、それはただただわたしの心臓を苦しめる。
誘拐された側と誘拐した側。
もしくは一般市民と海賊。
はたまたもしくはクルーとキャプテン。
立場も距離も弁えなくては。
昔馴染み、それは昔馴染みがあっただけで、今は馴染みがないのだから。
2日でログが溜まるあの島を出て、今わたしたちがいる海域はだいぶ暖かくなってきている。
そんな中、ベポくんからお誘いがあった。
「リア〜!日向ぼっこしよう!」
下の甲板から洗濯物を通したロープを上へと結び終わった頃に、ベポくんが下の甲板から叫んだ。
「する〜!!そっち行くから待ってて〜!」
わたしも大声で返し、急いで下へと降りる。
洗濯物もすっきり乾きそうな青空のもと、甲板の柵を背に足を正座から横に崩すようにして座る。
「はい、どうぞ」
「わ〜い!」
膝をポンポンと叩くと白い巨体がすぐに頭をわたしの膝にのせるようにして寝転ぶ。
うっ、やっぱり重い……!けれどそれ以上に大きな頭が可愛くてしょうがない…!!
「どう?」
「ん〜柔らかくないかなあ〜」
「え、うそ!わたしの太もも、こんなにあるのに?」
自分で言うのも悲しいけれど、イッカクちゃんのズボンが太ももで引っかかるほどにあるこのお肉が柔らかくないわけが無い。筋肉が少ないただの脂肪だというのに。