第7章 この世の良さ
伊吹はティーセットとサンドイッチを持ってきてくれた。それを二人して黙々と食べた。
「ムラサキさん、落ち着きましたか?」
「あぁ…悪かったな、迷惑かけて」
優しく微笑みを浮かべるムラサキさんは少し眠たそうだった。動いて軽食とは言え、サンドイッチを食べたのだ、眠くなる。
「すまん、横になりたいんだが…」
「私のベッド使っていいですよ」
言うや否や上着を脱いでベッドに倒れ込む。そうとう疲れたのだろう。ムラサキさんに羽毛を掛け、しばらく寝顔を観察する。
「…お嬢様、夜這いはいけませんよ」
「し、しないわよ!」
寝顔を観察していた私を見て伊吹は表情を崩さぬままシレッと言った。夜這いなどするものか、むしろムラサキさんにされたい。と思うのは我ながら恥ずかしかった。
「私も寝るね、お休みー伊吹」
「お休みなさいませ」
ムラサキさんの隣に体を横たえ、目を瞑る。すると案外、睡魔はすぐに訪れた。
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《ムラサキside》
「うーん…」
明るい日差しに目が覚めた俺は隣で寝ているヒカリに目を向けた。静かに寝息を立てていた。剥き出しの肩に触れてからハッと我に帰ったかのように再び剥き出しの肩を見た。
「なんで…下着しか着てないんだ、風邪引くだろ」
羽毛を掛けようとした時、ヒカリの睫毛が震え、瞼がゆっくりと持ち上がる。
「ムラサキさん…起きてたんですね?」
「さっきな、それよりヒカリ、下着しか着てないのか?風邪引くぞ」
「え?下着しかって…ムラサキさんが…ぬ、脱がしたんじゃないですか…っ」
「…え?」
ヒカリの発言に一瞬思考が停止する。脱がした…?俺が?いやいや、昨日はすぐ寝たはずだが。ヒカリを見れば赤面したまま俯いている。
「ヒカリ…俺はなにしたんだ?」
「な、なにって…昨日はその…気持ち良すぎて…///」
「ひ、ヒカリ?」
「ムラサキさん、激しくしすぎるから…//」
待て待て!俺はまさか、昨日ヒカリを…襲ったのか?だが、全く記憶にない。
「ヒカリっその…悪かった!記憶にないんだが、知らぬ間に襲っていたことは謝る!」