第6章 キスの効果
「随分、手薄だな?ここは」
「ここまで来れないだろうとか践んでいたのか?」
まあ、どっちにしろ早く着けたことには問題ない。ドアをミニマムの力で撃ち破り、中に入る。…そこは…
「…なんだ、この部屋は…」
「機械ばっかだな…」
そこは沢山の機械と中央に筒状のガラスに水を溜め込んだ水槽があった。機械の薄緑色の光が辺りをぼんやりと照らしている。
「ヒカリは…」
機械を避けて水槽近くに辿り着くとその中には沢山の管に繋がれたヒカリの姿があった。眠っているのか瞼を閉じたまま動かない。
「ヒカリ!!」
ガンッと水槽を拳で叩くがヒビが入るくらいで簡単には壊せない。俺の声を聞いてナイスとはじめも水槽のところに来た。
「まさか、こんな事になってるなんてな…」
ガシャアアンッ
なんとか水槽の壁を撃ち破り、大量の水を被りながらヒカリを管から引き離す。ヒカリの体は酷く冷えており、まるで死人そのもののようだった。
「ヒカリ…」
自分の着ている上着を代わりにヒカリに被せ、抱き寄せる。少しでも体温が戻るように…。
「おやおや…まさか、ここまで来るなんて」
聞き覚えのある声に顔を上げる。機械の合間を縫ってこちらに歩いてくる人影。あの教師だ。
「お前…」
「そんな怖い顔をしないでいただきたい…」
「何が目的でヒカリをこんな事に…!」
「…リセットですよ」
「リセット?」
三人でおうむ返しに聞き返す。
「そう、この世をリセットする為に彼女には少し力を貸していただきたくここへ連れてきたんですよ」
「この世をリセットだと?」
「この世は腐り切っている…不公平だ、ミニマムを持っていない人達は一生平凡な暮らししか出来ない…ミニマムを持っているだけで優遇される世の中など…あってはならない…」
つまり、彼が言いたいのはこの世が不公平だからリセットしてやり直させる為にヒカリの力を利用しようと言うことか。
「それじゃあ、大量にミニマムホルダーを集めたのにはどうなんだよ」
「あぁ…ただの力に過ぎません」