第3章 人探しと再開
《ヒカリside》
ムラサキさんに家まで送ってもらう際にムラサキさんが持っていたペットボトルを渡してきた。
「疲れただろ?」
「あ、ありがとうございます」
それを受け取り、早々キャップを開けて中の飲み物を口にする。時間が経っているからか、ぬるくあまり美味しいとは思わなかったが…。
「買ってきてくれてありがとうございます、ムラサキさん」
「このペットボトルを持ってどれだけ走ったか…」
お礼を言ったのにムラサキさんからは嫌みが返ってきた。優しいのか優しくないのか分からない。
「…でも、あそこに来てくれたってことはあのメッセージに気が付いてくれたってことですよね?」
「まさかとは思ったがな」
「私のこと信じてくれたってことですよね?」
「…」
ムラサキさんはその質問に答えてくれなかった。そっぽを向いたまま、私に顔を向けてくれない。
「…うだ」
「え?」
「そうだと言ったんだ」
ムラサキさんはそっぽを向いたままだったが、はっきりそう言ってくれた。耳が若干赤かったのは見なかったことにしよう。
「ふふっ」
「何がおかしいんだっ」
「なんでもないでーす!」
家が近付き、私はタッと駆け出した。家の門まで来て止まり、ムラサキさんに振り替える。
「ムラサキさん、また明日!」
「…あぁ」
その時のムラサキさんは私が今まで見た中で一番優しい顔をしていた気がした。
私はあの時、思ったのだ。ムラサキさんは私を信じてあそこまで来てくれたのだ。それが何より嬉しくて…。これからはもっと色んなムラサキさんが見てみたいと思った。この気持ちはきっと…
「恋なのかなー」
微笑みながら家に入ったのだった。