第22章 料理を二度と作らないと決めた日(千切・氷織・冴)【後編】
糸師冴
布団を被りながら泣いていれば寝室の扉が開いて冴が入ってくるのが分かった。そして冴がベッドの横に来たのが分かり、布団の隙間から覗くと冴が顔を俯かせながら立っている。
「🌸…悪かった。あんな事言って…」
『冴…』
「本当はあんな事言いたかった訳じゃねぇ。本当は…怪我したり苦手なんだから無理に作るなって言いたかった」
そういえば冴は昔から言葉足らずな所があったりした事を思い出した。そして言い方を間違えたりして自分で傷付いたりしていた事も。
「🌸は、俺が食いてぇとか言うから無理に作ってると思った。俺が言ったから怪我したり苦手な料理を無理に作ってると。だから…」
あんなことを言えば私が料理を辞めて、苦手な事から解放されたり怪我もしなくなると思ったんだろう。
「言い方を間違えた…悪かった」
そう言う冴の顔は傷付いた表情をしていて、私は布団から出ると両手でのその顔を包んであげれば冴は少し驚いた表情をしていた。
『相変わらず冴は言葉の選び方とか言い方が下手だねぇ。私じゃなきゃ絶交してたかもよ?』
「…かもしれねぇ」
『あと私は無理に作ってないよ?冴が喜んでくれるの嬉しくて作ってるの』
冴はその言葉にちょっと驚いたのか目を見開かせていた。
『だから無理してないよ』
「…そうか」
『…お腹すいたね。なんか作るね』
「ああ…」
『焦げても許してね?』
「俺は、🌸の料理なら焦げても好きだ」
『そっかぁ。嬉しいなぁ』
そして私はまた焦げた料理を作って、冴はそれを美味しいに食べてくれた。嬉しげな表情をして。