第22章 料理を二度と作らないと決めた日(千切・氷織・冴)【後編】
千切豹馬
「嫌だ」
ひょーまはそう言うと私の事を抱きしめてきたので驚いてしまった。なんで急に抱きしめてくるんだろうと思っていれば、ひょーまの涙声が耳元から聞こえてくる。
「🌸ごめん、八つ当たりした…。本当はあんな事思ってねぇんだ。ごめん…ごめん……」
『ひょーま…』
私を抱きしめているひょーまの腕は震えていて、時折鼻を啜る音が聞こえてくる。
「なんで、俺八つ当たりしちまったんだろ…」
『…それだけ疲れてたって事なんじゃない?』
「でも、ダメだろ。大事な彼女に八つ当たりして傷つけて…」
そう言いながらひょーまは私を離すと薄ら涙を溜めた目で見てきた。
「ごめん…。でもアレは本気じゃねぇんだ。🌸の飯食べるの好きだ、料理してる時の焦った顔とか上手くできた時の顔も好きだ」
そう言いながらひょーまは段々顔を俯かせていく。かなり自分の言ってしまった事にダメージを食らっているみたい。
『本気で思ってないの?』
「思ってない」
『八つ当たりしちゃって、思ってない事言っちゃうなんて、ひょーま子供みたいだね』
「誰が子供だよ」
ムッとした表情で見てくるひょーまはやっぱり子供みたいで笑ってしまう。
『許してあげる』
「本当か?」
『うん。なんかお腹空いたからご飯食べようか』
「🌸の料理が良い」
『焦げちゃうよ?』
「それが好きだから良いんだよ」