第32章 子供は私だけで育てると決めた日(凪・凛・カイザー)【後編】
糸師凛
『冴さん!?』
驚いて思わず大声を出していれば冴さんは凛ちゃんの胸ぐらを掴んでいて、凛ちゃんは項垂れていた。
「愚弟、今はこれだけで済ませてやる。🌸、話だけ聞いてやってくれ」
そう言う冴さんに私は頷きながら、顔を真っ赤に腫らす凛ちゃんを見つめる。
「🌸……悪かった」
『本当に思ってる?』
「思ってる。🌸とは別れたくねぇ…もう言わねぇ、言わない」
そう言いながら凛ちゃんの目から涙がボロボロと零れていて、私は小さく溜息をついてしまう。前もそうだった。凛ちゃんは別れると言ったあと泣きそうな顔をしながら謝って来るのだ。自分の言ったことに自分で傷付いて後悔して、そして私は凛ちゃんの涙に弱い。
『ねぇ凛ちゃん。私ね、本当はお腹の子と凛ちゃんと三人で一緒にいたい。でもね、凛ちゃんは多分このままだと次は離婚するって言う』
「言わねぇ!!」
『…凛ちゃん』
「もう言わねぇ。兄貴にも違う、契約書だって書く。言ったら次こそは…次こそは」
その先が言えなくて凛ちゃんはボロボロと泣くもんだから思わず抱きしめてしまっていた。
『今回だけチャンスあげる。でも次言ったら本気で別れるし、認知だけってまた言うからね?』
「うん…」
その後、凛ちゃんは喧嘩するとたまに「わかれ…!」と言いそうになって「別れねぇからな!!」と謎にキレるようになるから『困ったパパだね〜』と赤ちゃんと笑っている。