第4章 溺れる手
「おんりーって本当に綺麗に料理するよなぁ」
ある日のおらふくんの家に遊びに来ていた時だった。昼食を作ってきたからとおらふくん家のキッチンを借りていたら、急におらふくんが声を掛けてきた。
「大したことないよ」
俺はただ、持ってきた食べ物を温めるために鍋を借りていただけだ。そんなに汚れることもないのだし綺麗に見えただけだと布巾へ手を伸ばそうとした時、おらふくんの手が重なって俺は動きを止めた。
「ほら、また綺麗にしようとしてくれてるやん?」
「そんなに拭いてた?」
「拭いてた拭いてた」
俺の言葉におらふくんはそう答えながらもう片方の手を割り込ませると布巾を取って周辺を拭き始めた。
俺は鍋に視線を戻し、丁度よく温まっただろう料理に満足して火を止めた。するとひょこっと顔を出しておらふくんが聞いてくる。
「次はお皿出そか?」
「ああ、うん」
本当によく気が付く人だなぁ、と恋人の背中を目で追っていると、皿を持ってきたおらふくんが戻ってきてにこやかに笑った。