第1章 眠り姫
「俺に霊力を使って眠りについてしまった時よりも日にちが長くて、正直驚いているんだ…。
いつになったら、あんたは目を覚ましてくれるんだろうな…」
ベッドの縁に座って、主の頭を撫でる山姥切国広。
この本丸に配属されたばかりの頃、自分も弱くて手入れ部屋に何度も世話になった事。
写しは偽物ではないことを証明したくて、深手を負って本丸に帰還したことも。
その時に主の霊力が山姥切国広の深手の傷を癒した後、今回同様に5日間も眠り続けた。
今では懐かしい思い出なのだが、主には無理はしないで欲しいのが本音だ。
あれから更なる強さを求めて修行に旅立ちたいと相談した時は、快く許しをくれて。
修行を明けて本丸に戻ってきてからは、主の刀として共にある事を選び今に至る。
「主、窓を開けるぞ。部屋の空気を入れ替える」
今日の近侍の山姥切国広が様子を見に来て窓を開けると、さわやかな秋の風を運んでくる。
「…秋、だな」
執務室には三日月宗近と燭台切光忠がいて、主の仕事を代わりにしている。
「戻った。報告はここに纏めてある」
「ああ、ご苦労だったな。日光、調子はどうだ?」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
一文字一家が遠征から帰還し、報告書を三日月に提出する。
主は未だに眠っていると聞かされたが、すぐにでも顔が見たくなって部屋へ向かってしまった。
「主は」
「…日光か。主ならまだ眠っているぞ」
「そのようだな」
一部短刀達からは、主が目覚めないのになぜそんなに冷静でいられるんだと言われるようになった。
が、自分だって不安に決まっている。
周りに悟られないよう、表に出さないようにしているだけだ。
それに、気付いてしまった。
刀の自分に芽生える訳がないと思っていた主への、秘めたる想いに。