第1章 眠り姫
日光は仕事が終わり、時間が空く度に主の部屋へ訪れて様子を窺う。
あれから3日、5日と経過したが、主が目を覚ます気配が一向にない。
「あるじさん、まるで眠り姫だね」
「!」
主の様子が気になって、短刀達も入れ替わりで様子を窺いに来ていたが、今回は乱が来た。
「眠り姫?なんだそれは」
「えー?日光さん知らないの?
外国のお話だよ、あるじさんが教えてくれたの!」
そうだった。
主は違う時代からやって来た審神者で人の子。
主がいた時代では、刀は美術品として資料館や美術展なんかで厳重に保管されて展示されていると聞いたことがあった。
西洋や東洋の童話なんかも短刀達に聞かせていたな、と。
「眠り姫はね、魔女の呪いで眠りについてしまったお姫様が、王子様の口付けで目を覚ますっていうお話だよ」
日光はただの物語か、くだらないと目を伏せた。
「日光さん今、くだらないって思ったでしょ!?
あ、そうだ!僕があるじさんに口付けをしてみようかな!?」
乱が主に口付けをという言葉を聞いて目を開くと、主の唇に自分の唇を近付ける乱の姿が映った。
その行動を止めるべく、乱の肩を強く掴んで主から引き離す。
「やめろ乱、薬研達も言っていただろう。
自然に目が覚めるのを待てと」
山鳥毛も鳥に擬えて言っていた。
〝だからと言って、眠っている小鳥を無理矢理起こさないようにな。
下手に起こそうとしたら小鳥は、落鳥すると思え。……いいな〟
「そうだった…」
「………」
顔には出さないが、乱の主への口付けを阻止出来てホッとしている。
自分の目の前で主が誰かと口付けをしている姿なんて、見たくもないと思ってしまったから。
…例えそれが、一文字一家の長である山鳥毛でも。