第11章 心緒
side 赤井
仕事の予定が急遽変更になり
俺と美緒は2人で晩酌をすることになった。
しかし美緒は酒が弱いにも関わらず
割と早いペースで酒を飲んでいた。
ハイボール一杯で酔っ払ってしまった美緒は
ほんのり頬が赤くなっていていつもより目尻が下がり
黒の瞳はトロン、として熱を帯びている。
…いくら俺の事を信用しているからといって
酒に酔った姿を簡単に見せるんじゃない、と言ってやりたいが
酔っ払いにそんな事を言っても無駄だと思い口にするのはやめた。
だがこんな夜遅く無防備に男の隣で酒を飲むなんて…
襲われたって文句言えないぞ?
まぁ…夜頻繁に家に来ている俺が言うなって感じだがな。
俺が頭の中でそんな事を考えているとは思ってもいない美緒は、ソファーの背にもたれ掛かり、ウトウトし始めた。
「おい、美緒。眠いのか?」
『んー……眠…くない、です…』
「全く…仕方のない奴だ。」
持っていたグラスを机の上に置き
美緒を寝室に運ぼうと思い彼女を抱き上げた。
寝室のベットに横たわらせると美緒の目が薄らと開いた。
『んん…赤井さん…私ソファーで…』
「いいからもう寝ろ。」
美緒の頭を撫でてやると気持ちよさそうに口元を緩め
そのまま目を閉じていた。
先日のストーカーの事件が解決してからも
頻繁に会っている俺と美緒。
本当は会うべきじゃないと頭の中では分かっているんだが
仕事で疲れた時や腹が減った時…
いつも美緒の顔が思い浮かび、気がつくといつもコイツの家に向かって歩き出している自分がいる。
ずっと目を背けていたこの気持ち…
もういい加減認めることにしよう。
「まさかお前みたいな女に惚れるとはな…」
そう呟いてから美緒の寝顔をしばらく見つめ
俺はリビングに戻り、後片付けをしていつも通りソファーに横になって目を閉じた。
そして翌朝、俺は美緒が起きて来る前に部屋を出て仕事に向かった。