第11章 心緒
ストーカー事件が解決してから日が経ち
私は以前と同じ平和な日常を過ごしていた。
ストーカーの被害に遭っていたことを知った他の先生達には、なんで早く相談しなかったんだと滅茶苦茶怒られて…
教頭先生や校長先生にも
今後何かあった時は絶対に相談するようにと念を押され、私は職場環境に恵まれているんだな…って実感した。
しかし小林先生は…
「もう!若山先生!
何かあった時は絶対言って下さいって言いましたよね!?
しかもストーカーの犯人があの男性教師だったなんて…!
本当に…無事で良かったです……。」
怒っているのかと思いきや
私のことを心配して泣き出してしまい…
彼女には何度も何度も謝罪して
今後何かあった時は真っ先に相談すると約束させられた。
あの男性教師がテレビの報道で逮捕されたと流れていたけど
ストーカーの被害者が私であることは報道されなかった。
私だと知られれば生徒達や保護者にも心配かけてしまうし
罪状がストーカー行為の為、警察の人が私の気持ちを汲んで被害者については何も語らないことを約束してくれたんだ。
そのご厚意は大変有り難く、私はいつもと変わらずに
教師として働く事ができている。
今日もいつものように仕事を終えて
校門を出て自分の家のアパートに向かった。
いつもの退勤ルートを歩いていると、アパートの近くで
1人の高身長の男性が壁に背を預けてタバコを吸いながら立っていた。
『え…赤井さん…?』
「お疲れ。」
『…またご飯ですか?』
「そろそろ帰ってくる時間だろうと思ってな。」
…赤井さんは私の作るご飯がかなり気に入ってしまったらしく、事件が解決した今でも時々私の家に来ている。