第58章 褒美
1週間後ー…
『楽しみだね!
ミュージカル見るのなんて久しぶり!』
「なんだ、見たことはあるんだな。」
『パリで修行してた時に一度だけ見に行ったの。
でもフランス語だったから殆ど聞き取れなくて…』
「オペラ座の怪盗はフランスの作家の発祥だからな。」
さすが赤井さん、なんでも知ってるなぁ…。
私と昴さんに変装した赤井さんは
ミュージカルを観覧する為、大きな劇場を訪れていた。
見終わった後はホテルに行ってディナーを楽しむ予定で
私は楽しみすぎてずっとウキウキした気持ちだった。
『パリで見た時は普通の一般席だったし
まさかこんないい席で見られるなんて…』
劇場の入り口から中に入り、座席の位置を確認すると
家族や恋人同士で来る人達に人気の個室みたいなボックス席で
舞台が見えやすい位置で見切れる事なく、2人きりでゆったりと観れそうだった。
「照明が落ちて暗くなったら何でも出来そうだ。」
『!?何でもって…!!何言ってんの!?
変なことするのは絶対だめだよ!?』
「冗談だ、下の席や隣の席から見える可能性もあるからな?」
…そういう問題じゃない!!
赤井さんにちょっかい出されたらドキドキして
絶対ミュージカルを観るどころじゃなくなる!
『昴さんの意地悪っ!!』
「悪い悪い、…ほらもうすぐ始まるぞ。」
全然悪いと思っていなさそうな昴さんの言葉を聞いていると、すぐに劇場内は照明が落ち、ミュージカルが始まった。
多くの演者達による踊りや音楽の演奏、歌、演技力…
私はその全てに圧倒され、かなり集中して観ていたから
オペラ座の怪盗の世界に入り込んだ気分だった。
しかし劇中にはファントム、と呼ばれる怪盗役が出ているんだけど、白い仮面を被ったその姿は
体が時々ビクッと震えてしまうくらい恐ろしい演出力だった。
そんな私の様子を見ていた昴さんは
大きな暖かい手で私の手を握ってくれて…
「怖いんだろう?繋いでてやる。」
『うん…ありがとう…。』
小さい声でお礼を伝え、ギュッと手を握ったまま鑑賞しているとあっという間に時間が過ぎて
オペラ座の怪盗はエンディングを迎えていた。