第1章 前世
「今の時代の人達には、転生って言った方がわかりやすいですか?」
『…転、生?』
それなら聞いたことが何度かある。
転生を題材にしたアニメやドラマ、映画はたくさんあったから。
でもまさか自分が転生する羽目になるなんて…
「あなたは…元いた世界では酷い目に遭いましたよね?
新たな世界で幸せになれることを祈っています。
嫌なことは忘れて、新しい人生を楽しんで下さい。」
……新しい人生かぁ。
確かに別の世界に行くのはいいかもしれないな…
付き合ってた彼氏の顔を二度と見ることはないだろうし
もし見かけたらきっと刺し殺しちゃうかもしれないもん。
『分かりました。
本当に転生するなんてまだ信じていませんが、案内して下さい!』
「では、あちらからどうぞ。」
案内された方へ顔を向けると、茶色の扉がポツンと現れた。
『ありがとう、変なおじさん。』
「変な、は余計です。」
クスクス笑いながら扉を開けると
私は眩しい光に包まれ、おじさんが言うように別の世界に飛ばされているのだろうと思い、目をギュッと閉じた。