第53章 詫言 ✴︎
「わざわざ言わなくても
僕の気持ちは分かってくれてると思ってました。ですが…
揶揄ってる、と勘違いされるくらいなら正直に言います…
美緒さん…僕はあなたの事が好きです。」
『っ、安室さん…』
「好き過ぎて諦められないんです。
だから僕のこと…ちゃんと考えてくれませんか?」
『無理ですよ…。だって私…っ…』
赤井さんと付き合ってるんだから…
そう言おうと口を開きかけたら、安室さんは私の口を手で塞いできた。
「聞きたくない…」
『っ…』
「あの男が僕に妬いているのと同じで
僕だってあの男に…いつも妬いているんです。」
私の瞳を見つめながら話す安室さんの瞳は
なんだかすごく切なく、悲しそうにも見えて…
そんな目をとても見ていられなくて瞼を伏せると
安室さんは私の口元に置いていた手を退けてくれた。
「なぜあの男の恋人であるあなたにこんなにも惹かれるのか…
僕にも理由が分からなくて、かなり戸惑ってます。」
『…。』
「でも美緒さん…僕は本気です。
それだけは覚えておいて下さい…
…今日はありがとうございました。」
安室さんはハッキリとそう言い切ると
私から離れ、店内の方に戻って行った。
『…ど、どうしよう。』
安室さんに告白…されちゃった…
赤井さんに言った方がいいのかな…
でもそんな事話したところで解決する…?
絶対しない…よね。
安室さんには考えて欲しいって言われたけど
私の気持ちはずっと赤井さんに向いてる…
それはこれから先も変わらないと胸を張って言える。
だから安室さんの告白には
断る、という選択肢しか私の中にはない。
早く返事をしたかったけど
さすがに今日はまだポアロの仕事で忙しいだろうし
また別の機会にちゃんと断ろう、と決めて
私はお店を出て自宅まで帰ってきた。