第8章 強制
ご飯を作る前に郵便物を確認していると
一つだけ差出人が書いていない真っ白な封筒が入っていた。
『…何だろうこれ。』
何となく開けてはいけない気はしたけど
気になってしまうのが人間の性。
ハサミで封を開けて中身を確認すると
そこには私の写真が数枚入っていた。
『っ、うそ……なんで……っ…』
写真に写っていた私はカメラ目線のものが一枚も無く
どう見ても隠し撮りの写真だった。
仕事帰りにスーパーに寄って買い物をしているところや休みの日にカフェでお茶しているところなどを撮られていて…
とてもそんな写真をずっと見ていることが出来ず
封筒の中に勢いよく戻した。
警察に相談しようか考えたけど
ストーカーは立証が難しいと友人に聞いた事があるし
とりあえず写真は捨てずに引き出しの中にしまっておくことにした。
『なんだか最近…嫌なこと続きだな…』
頭を悩まされることばかり起きていて
私は精神的にかなり弱ってきていた。
その日はもう晩ご飯を作る気力すら湧かず
お風呂だけ済ませて早い時間からベットに寝転がった。
しかし目を瞑るとストーカーの事を思い出し
恐怖で体が震え、なかなか寝付けなくて…
ポストに写真を入れられているということは
私の自宅もすでに知られているということ。
寝ている間に誰かが入ってきたらどうしよう、と怖くなり
私はその日から毎日、眠れない夜が続いてしまっていた。