第8章 強制
そして翌日…
いつも通り学校に出勤し職員室に入ると
昨日一緒に飲みに行った男性教員が私の元に近づいてきた。
「若山先生、おはようございます!」
『おはようございます…昨日はご馳走様でした。』
「いえいえ!また飲みに行きましょうね!
あ、来週の金曜日とかどうです?次の日は休みですし
気にせず飲めますよね!?」
『いえ…あの…私当分お酒はいいです…。
すみませんが授業の準備があるので、失礼します。』
昨日のお礼はちゃんと伝えたし
早く話を終わらせたくて頭を下げてから自分の机に向かった。
席に着いてから無意識にため息が出て
今後もこうやって飲みに誘われるかもしれないと思うと精神的に辛いな…
こんな時、彼氏がいたら断る口実になるんだけど
私にはそんな相手はいない。
前世で結婚間近の彼氏に浮気されたことにより
転生してからは誰とも付き合わずに25年間を過ごしてきた。
告白されることは何回かあったけど全部断っていて
どうやら私は浮気されたことがかなりトラウマになっているみたい…
その日は1日憂鬱な気持ちのまま仕事を終えて
帰宅しようと思い夜道を歩いていると、
誰かに見られているような視線を感じた。
パッと振り返るとそこには誰もいなくて…
気のせいか…と思い再び前を向いて歩き出したけど
静まり返った夜道に私の足音とは別の足音が響いていた。
その足音は私が立ち止まると同じように止まり
少し早足で歩くと同じようなリズムで追いかけてくる。
…っ、…怖い…怖い…!!
それは明らかにストーカーという感じで
私は震える足を懸命に動かし走って家まで帰ってきた。
アパートに入る前、道路で辺りを見渡したけど
すでに足音は聞こえなくなっていたから
上手く撒けたことにほっと安心し、ポストに入っていた郵便物を取り出してから自分の部屋に帰ってきた。