第50章 同行
『じゃあ…
その仙波さんという方が犯人なんですか?』
「いえ、それはありえないんですよ…」
私の質問に否定した高木刑事さんの話によると
唯一の出入り口である玄関には
被害者のボディーガードである男性2人が張り付いてて
離れに誰かが入る時は、入念にボディーチェックを行っていたとのこと。
だから鈍器を持って離れに入ることは出来ないし
金属探知機まで使っていたんだとか…
「では、元々離れの中にあった物を
凶器として使ったって事はないんですか?」
「ええ、樋山社長はかなり悪質な地上げをやっていたようで
敵も多かったらしいです。招いた人に襲われないように
武器になるようなものは何も置かないようにしていたと聞きました。」
高木刑事の話を聞き、昴さんは何か考え込んでいて…
今度は江戸川くんが質問をしていた。
コ「その仙波さんって人が離れに入った時は
あの社長さん、もう亡くなってたって事?」
高「ああ、ボディーチェックの後に離れに入って声をかけたけど返事がなくて、お風呂場のドアが空いてたから中に入ると
樋山社長が頭から血を流していて、駆け寄ったらガラスの破片を踏んでしまい、玄関に戻ってボディーガードの人にその事を伝えたみたいなんだ。」
『…?ガラスの破片?』
「お風呂場のドアの近くにコップの破片が落ちてたんですよ。
恐らく押し入ってきた犯人に向かって、被害者が投げつけたんでしょう。」
な、なるほど…
なんか聞いてるだけで頭が痛くなる殺人事件だな…
謎ばっかりなんだもん…。
「…あのー、間違っていたらすみませんが
もしかして現場の脱衣所にあった水道の蛇口…
開きっぱなしになっていませんでしたか?」
高「え、えぇ…そうだったようですけど…
どうしてそれを…?」
高木刑事の返答を聞いた昴さんは
また何かを考え込んでいるようで…
そんな彼の姿を見ていると
江戸川くんが私の服と昴さんの服を引っ張りながら
小さい声で話しかけて来た。
「若山先生、赤井さん、ちょっといい…?」
江戸川くんの声が聞こえるように体を屈めると
まずは私に
この事件の真相を知ってるなら教えてと聞いてきた。