第48章 脆弱
『んっ…赤井さ、ん…もっと…』
「っ、いや…今日はここまでだ。」
『え…どうしてですか…?』
ただ唇を合わせるだけのキスだけで終わりなんて
いつもなら舌を絡ませ合う濃厚なものまでしてるのに…
やっぱりまだ安室さんとのこと怒ってるのかな…。
「…おい、そんな悲しそうな顔をするな。
また変な誤解をしているだろう…」
『だって…私…もっと赤井さんと…』
「いつものようなキスは俺もしたい。
だがな……俺が身体に触れるだけで
お前、少し震えているぞ?」
え…
嘘…
私はそんなの全然気付かなかったけど…
じゃあ赤井さんは…
「あんな目に遭ったんだ、
無意識に体が強張るのも無理はない。
俺はお前を怖がらせたくないし、
無理矢理して……嫌われたくないんだ…」
赤井さんを嫌うなんてありえないのに…
でも…私の心も体も気にしてくれる赤井さんが好きで好きで仕方ない…
こんなに優しい人を嫌いになれるわけがない。
「…キスした後の美緒の顔は
蕩けていて可愛すぎるからな…
俺はそれだけでもお前を襲いそうになるんだ。
…だから今日はこのキスだけで許してくれ。」
『っ、わ、分かりました…。あ、でも…』
「どうした?」
『えっと…出かける時間になるまで
さっきみたいに…後ろからギュッて…してて欲しいです…』
赤井さんに包まれていると
すごくあったかくて落ち着くから、と理由も伝えると
私の体はすぐに後ろから抱き締められていた。
「………これは拷問だな…」
『え?何か言いました?』
「いや…何でもない……
警察に行く時間になるまでこうしててやる。」
『ふふっ、幸せです。』
それから私達は
警察の事情聴取に行く時間になるまでのんびりと過ごした。
ずっと赤井さんがそばにいてくれたから
事情聴取で学校荒らしの男達の話を聞かれても
恐怖で体が震える事はなかった。
そしてその日の夜も私は工藤邸に泊まり
赤井さんはずっと抱き締めたままで眠ってくれた。
アパートに帰ろうと思ったけど
私を1人にするのが心配、と言われお言葉に甘えたけど
赤井さんに甘えてばかりじゃだめだよね…
今回のことで自分が如何に弱い人間か思い知った。
もっと私も強くならなきゃな……