第8章 強制
「若山先生!
今日は僕のおすすめの居酒屋を予約しておきましたから!
さぁ行きましょう!」
『あ、はい…そうですね。』
体育会系、という言葉がピッタリの彼は
ウキウキした様子で歩き出した。
彼の斜め後ろを歩く私に対して
ペラペラと色んなことを話しかけてくる先輩は
とても楽しそうだが、私は相槌をするだけで精一杯。
…もうすでに帰りたくなってきた。
そんな事言えるはずもなく、しばらく歩き続けていると
一軒の居酒屋に到着し、予約してくれていた掘り炬燵の席に座って、お互いにお酒を注文した。
「若山先生、今日は僕の奢りです!
たくさん飲んで嫌なことは忘れましょう!」
『あはは…そうですね…。』
本当はたくさん飲めればいいんだけど
私はお酒が強くないし飲むとすぐに酔っ払ってしまうから
最初に注文したビールをちびちび飲み
先輩教師の話に適当に相槌を打っていた。
そして、程よく時間が経ったところで
明日も仕事だからそろそろ帰ろうと声をかけてお店を出ることになった。
結局お酒は2杯しか飲んでいないけど、私はほろ酔い気味。
会計を終えて店を出ると先輩教師は私を自宅に送ると言ってきた。
『大丈夫ですよ?私は1人で帰れますから。』
「いえいえ、そんな遠慮しなくていいですよ!」
いや、遠慮とかじゃなくて
これ以上あなたとは一緒にいたくないだけ…
酔った勢いで危うく肩を組まれそうになったけど
それをサッと避けて彼と距離を取ることに成功した。