第46章 心痛
『…っ……え…』
通行人が何人かいて見辛かったけど
赤井さんはジョディさんの肩に手を置き、抱き寄せながら歩いていた。
そのままホテルの方に向かうのかと思ったけど
2人は路地の方へと進んで行き、私は後を追いかけた。
『…っ、すいません、通してください!』
通行人をかき分けて進み、2人が歩いて行った路地に入ると
少し離れたところに2人の姿を見つけた。
…そして2人はずっと寄り添い合いながら
一軒の煌びやかな建物の中へと入って行った。
『…なん、で……?』
その建物は私は利用したことはないけど
間違いなくラブホテル、と呼ばれるところで…
私はふらふらと建物の入り口まで来たけど
中に乗り込んでいく度胸なんてなく、足がガクガクと震え
絶望の淵に突き落とされた気分だった。
『あ、はは……』
自嘲的な乾いた笑いが出ると
頭上から冷たい水滴が垂れてきて、それは徐々に勢いを増し
私の体を濡らしていった。
『…雨……』
ちょうどよかった。
こんなに雨が降っていたら、私の涙は誰にも見られない。
傘を買う、なんて考えも思い浮かばないくらい
私の心は打ち砕かれてしまっていた…
さっきまでちゃんと話そうって決めてたはずなのにな…
本当に私は…臆病な人間だ。
結局…前世と同じように
私はまた大事な人に裏切られたのかな…
『もう……かえ、ろ…』
大雨の中、おぼつかない足で家に向かって歩き
傘も差さずに泣きながら歩いている私を通行人はちらちらと見ている。
でもそんなの全然気にならなくて…
今の私の目には周りの景色が真っ暗闇のようにしか見えず…
しばらく雨の中をとぼとぼと歩いていると
急に私に雨がかからなくなって、不思議に思い足を止めると
頭上には傘が差されていた。
「…何やってるんですか美緒さん……
風邪を引きますよ?」
聞いた事のある声が聞こえて振り返ると
そこにはスーツ姿の安室さんが立っていた。
『あ…むろ、さん……』
安室さんはジッと私を見つめていて…
何でここにいるかを尋ねようとしたところで
意識が遠のく感覚がして、私はそのまま意識を手放した。