第45章 久々 ✴︎
美緒と出会えて本当に幸せだ、とな…
『じゃあ赤井さん、私は先に出ますね!』
頭の中で幸せな気持ちに浸っていると
美緒はいつの間にか朝食を食べ終わっており
シンクに食器を運び、鞄を肩に担ぎ玄関に向かって行った。
見送るために後を着いて行き
靴を履き終わったところで美緒は何かを思い出したように
カバンの中を漁り、俺に手を差し出した。
『あの…これ…』
不思議に思いながら差し出された手の下に自分の手を添えると、俺の掌には見覚えがある鍵が置かれていた。
『今度は返さなくていいですから…
持っててくれますか…?』
…この鍵はもう二度と美緒に会えないと伝えた日
俺がポストの中にいれたもの…
あの時の鍵が落ちる虚しい金属音は
しばらく耳に残って離れなかったんだよな…
それがこうしてまた
俺の手に戻って来たことが嬉しくてたまらなくなり
美緒の腕を掴み引き寄せて、勢いよく抱き締めた。
『っ、赤井さん…?』
「ずっと…肌身離さず持っててやる。」
『!!嬉しいです…』
もう二度とこの合鍵は返さない。
…美緒と一緒に暮らすようになるまではな。
いつかそんな未来が訪れると期待しながら身を離し
ソッとキスをすると、美緒は嬉しそうに笑っていた。
『ふふっ、行ってきます!』
「ああ…仕事頑張れよ?また連絡する。」
『はいっ!赤井さんも頑張って下さいね!』
扉を閉めるギリギリまで俺に笑顔を向けていた美緒。
幸せな気分のまま食器の片付けをした後
沖矢昴の顔に変装し、美緒のアパートを出て工藤邸に向かった。
この時の俺は
まさか自分が美緒を傷つける出来事が訪れるなんて…
夢にも思っていなかった。