第43章 謝意
『黒とか白とか、純粋とかそうじゃないとか
そんなことは考えなくていいんです。
精神的に疲れている時は
嫌な事をあれこれ考えてしまうこともあると思いますけど
そんな時こそ美味しいものを食べて、よく寝て体を休める…
それが1番です。』
私は安室さんみたいに普段そんなに頭を使わないから
疲労感も違うと思うけど…
でも疲れてる時に美味しいものを食べると
絶対少しは元気になれる……
私は少しでも多くの人に元気になってもらいたくて
前世では料理人になったんだ。
「美緒さん…、」
『…って、なんかごめんなさい!偉そうに言っちゃって…
安室さんみたいに忙しい人だと
そんな簡単に休めるわけないですよね!』
自分の思ってることを正直に言い過ぎたし
少し説教くさかったかもしれない…
これも教師になった影響なのかな…
「やはり僕は…あの男が羨ましいです。」
『へっ…?』
「美緒さんみたいに…優しくて可愛くて…
一緒にいるだけで心が休まる女性と寄り添ってるあの男が…」
安室さんは隣に座っている私を
真剣な表情でジッと見つめていて…
なんだか恥ずかしくなってきて私はパッと目を逸らした。
『も、もう!安室さんってば…!
そんな事言わなくてもいいですって!
そ、それよりご飯!冷めないうちに早く食べましょうよ!』
恥ずかしさを紛らわすように再びお箸を手に取り
食事を再開しようとしたところ、
私の左隣に座っている安室さんは私の左手を握ってきた。
『っ、え…!ちょ、ちょっと…』
「美緒さんのおかげで元気が出ました。
…ありがとうございます。」
『わ、わかりましたから…あの…手を…』
私の左手は痛くない程度に強く握られていて…
引っ張って離そうとしてもビクともしなかった。
「もう少しだけ…あなたに触れていたいです。」
『っ、だめです…!困ります!それに半径1メートル…!』
「それはもう時効でいいでしょう。」
勝手に時効にしないで…!!
なんとか距離を取ろうと試みたけど
安室さんとの距離は徐々に近づいてきてしまっていた。