第6章 正体
何が何だか分からないままでいると
事務所の向かいのビルの屋上から
何かが手摺に当たるようなカンッという金属音が聞こえた。
屋上を見上げると複数の黒い服を着た人達がいて
あんな所で何してるんだろう…と思いながら見てると
その人達はすぐに見えなくなってしまい、
そのビルの近くから車が2台すごいスピードで走り去って行った。
「先生は一緒に逃げなくていいの?」
『え…?逃げるって…どういうこと…?』
江戸川くんの言っている意味がわからず首を傾げていると
私の質問に答えないまま、外国人の2人と一緒に再び車に乗り込んでどこかへ行ってしまった。
…。
『もうっ!ちゃんと説明して行ってよ!
残された私の気持ち考えてよ!意味がわかんないんだけど!?』
どこにぶつけたらいいのかわからない戸惑いを1人で叫んだ後
私はそのまま自分のアパートに向かって歩き出した。
家に着いてから何だかどっと疲れが襲ってきて
私はすぐソファーにドサっと横になった。
肉体的よりも精神的に疲れた私は
今日はもう絶対外に出ない!と決めてスマホの電源を切り
家に引きこもった。
そしてもう一つ…最悪なことを思い出してしまった。
『ヨーコちゃんのサイン…もらうの忘れた…』