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《赤井夢》Happiness{R18}

第34章 水泳




『…大事な家族を失って悲しい気持ちは分かります。
私も大切に思ってた人が死んで、
とても苦しい思いをしましたから…。』

「…。」


『あのお嬢様がしたことは許されるべきことではないですが
彼女が亡くなって悲しむ人だっているんです。
あの人にも…家族がいたんです……!
綺麗事だって思われるかもしれませんが
あなたと同じ思いをする人が出てくるってこと…
殺人を犯す前に考えなかったんですか…?』




黙って私の話を聞いていた支配人の人は
ゆっくり私の方を向き、頭を下げた。



「私の手当てをして頂き……ありがとうございました。」




彼は私にそう告げると、手錠をかけられ
再びホテルの出口に向かって歩き出し
その様子を見ていると世良さんが私に声を掛けてきた。




「さすが小学校の先生なだけあるな。
一つ一つの言葉に重みを感じたよ。」

『…歳上の男性に説教しちゃった……』

「ははっ!でもあの人の心にはかなり響いたと思うよ!」



世良さんはニコッと私に笑いかけてくれて
口元からは可愛らしい八重歯が見えていた。




「そういえば先生も家族を亡くしたことあるのか?
さっき犯人に話してたけど…」

『いや…家族じゃないんだけどね?
とても大切な人だったから…すごく悲しかったの。』



まぁ結局、赤井さんは生きてたんだけど
もうあんな悲しい思いは2度としたくないから…。




『あ、"先生も"ってことは世良さんも…?』

「ああ…僕も大好きだった兄貴が死んだんだ。
本当に尊敬してたから辛かったなぁ…』

『そう…なんだ……ごめん、辛い事思い出させたよね?』

「先生が謝る必要ないさ。
それに、もう1人の兄貴は元気に健在してるからね。」

『ふふっ、そっか。』


一瞬悲しそうな顔をした世良さんは
すぐに明るい笑顔を取り戻していたからホッとした。





事件は無事に解決し、警部さんに挨拶をしたところで
私達はホテルの出口に向かって歩き出した。





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