第33章 運命 ✴︎
工藤邸に着いてからキッチンを借りて
私は晩ごはんの支度をしていた。
今日は特別に食後のデザートも用意して…
ある程度出来上がってから赤井さんにメールをすると
仕事が終わって今から帰って来るとのことだった。
過去に赤井さんと出会っていた事を思い出したから
今日の昼まで赤井さんと一緒にいたけど
またすぐに会いたくなっちゃったんだ。
それに赤井さんも
用意したデザートを見せたら、私と初めて会った時のことを
思い出してくれるかなって思って…
期待に胸を膨らませながら
晩ごはんの仕上げに取り掛かっていると玄関から扉の開く音が聞こえた。
私のいるキッチンに足音が近づいてくるだけで
自然と顔がニヤけてきちゃう…
キッチンの近くにある扉が開き顔を向けると
すでに昴さんの変装を解いた赤井さんがいた。
『おかえりなさいっ!
あの…急に来ちゃってすみません…
もう少し赤井さんと一緒にいたくなっちゃいまして…』
なんだか少し恥ずかしくなってきて
ゆっくり赤井さんと視線を合わすと
いつもより目尻を下げ、優しく微笑んでいる赤井さんが私を見つめていた。
「俺も…お前と一緒にいたかったから…
晩飯用意してくれたのか?」
『あっ…は、はい…。ちょうど今出来たところで…』
「そうか…
何だか甘い香りもするな…デザートも作ったのか?」
そう尋ねられたから、
ひょっとしたら赤井さんも私と会った時のことを思い出したんじゃないかって…
何となくそんな気がした。
『久しぶりに作ったデザートなんです!
とりあえず先にごはん食べましょう?』
赤井さんをテーブル席に座らせてご飯を運び
2人で一緒に食した。
いつも通り他愛無い話をしながらの食事…
私は頭の中でどうやって昔会った時の話を切り出そうか考えていた。