第32章 留学
『っ、うそぉ…』
「?美緒さん…?どうかしましたか?」
安室さんは突然黙ってしまった私を不思議そうな目で見ていた。
でも私は
あの時助けてもらった人の事を思い出していて…
とても信じられないけど
私が知っているあの人と昔に出会っていたと分かり
驚きと同時に喜びも湧き上がってきて…
完全に自分の世界に入ってしまっていた。
私を助けてくれた男性の印象は
男性なのに髪が少し長くて、ニット帽を被ってて
サングラスをしてたから瞳の色は見えなかったけど…
危ないところを助けてくれた恩人だから
店内にいるホストファミリーを呼びに行って
ちゃんとお礼をしようと思っていたけど
外に出たらその人は姿を消していた。
お礼を言いたかったのに言えず
名前すら聞くことも出来ず、すごく後悔していたのに…
なんで今までずっと忘れていたんだろう…。
赤井さん……
私達が初めて会ったのは…
あのバスジャック事件の時じゃなかったんですね?
あなたと再会できたこと…
"運命"としか思えないです…。
『…ふふっ。』
「…本当にどうしたんですか?
急に自分の世界に入ったと思ったら突然笑い出して…
正直言って不気味ですよ?」
『なんでもないです。
とっても素敵なことを思い出して幸せなので
不気味って言われようが思われようが気にしませーん。』
「はぁ…でも僕は意味不明なので
説明してもらえるとありがたいのですが?」
『安室さんには内緒でーす。
じゃあ私、用事を思い出したので帰りますね!』
驚いている安室さんには悪いけど
私の頭の中は赤井さんの事でいっぱいになったから
席を立って、机の上にコーヒー代を置いてすぐにお店を出た。
赤井さんはFBIの仕事でいつ帰ってくるか分からないけど
またあの時のカップケーキを作りたくなって…
私は急いでスーパーに寄ってから工藤邸に戻ってきた。