第31章 由縁
東都水族館の事件から数日後。
私は探偵団のみんなと一緒に阿笠博士の家を訪れていた。
吉田さんと円谷くんと小嶋くんは
ダーツで遊ぶことに夢中になっていて
私と江戸川くんと灰原さんはソファーに座り、子供達の様子を見ていた。
『灰原さん、これ…この前借りたハンカチ返すね!』
私が今日この家に来た目的は彼女にハンカチを返す為で…
子供達はたまたまここに遊びに来ていたんだ。
「なぁ、どうしてキュラソーは…
先生達を助けてくれたんだろうな…」
「彼女が亡くなった今ではもう分からないけど…
記憶を失う前の自分より、
今の自分の方が好きって言ってたわ。
先生や子供達があの人を変えたのかもね?」
うーん…そう言われてもな…
警察病院では一緒におしゃべりしたり
オセロしたり遊んでた覚えしかないんだよね…。
あの女性のことを考え出すと、最後に見た彼女の微笑んだ顔が目に浮かんできて
気持ちが沈む…
そんな私の様子に気づいた子供達は私のそばに近づいてきた。
「先生どうしたんですか?」
「すごく暗い顔してるぞ?」
「やっぱりあのお姉さんがいなくなっちゃって寂しい?」
…さっきまでダーツに夢中だったのに
子供って大人が思ってるより周りの事をよく見てるなぁ。
『そりゃあ寂しいよ?でもきっとあの人は記憶が戻って
元いた場所で幸せに暮らしてるはずだから…
また会えるといいなって思ってるよ!』
子供達に笑いながらそう話すと
みんなも私と同じように笑顔になっていた。
「あ!そういえば!僕達だけで観覧車に乗った時
あのお姉さんが先生のこと話してましたよ!」
『え…?私のこと?』
それはたぶん
私と江戸川くんと灰原さんがベンチで話していた隙に
みんなだけでこっそり観覧車に乗りに行った時のことだろう。