第30章 救済
「少しは元気出たみたいだな。」
『え…?』
赤井さんのその言葉を聞いて、ハッとした。
きっとこの人は、私が悲しまないように
わざと意地悪なことを言って私を元気づけてくれようとしていたんだ。
本当に赤井さんって…いつも私に優しいんだから…。
赤井さんに頭を撫でられ続けながら
私は赤井さんの顔だけでなく手や腕に出来た怪我の手当てをした。
そして救急箱のフタを閉じてから
隣に座っている赤井さんの胸に飛び込んだ。
『赤井さんって…
どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?』
「そんなの…決まっているだろう?」
『え…?っ、うわっ…!』
座った状態で赤井さんに抱きついていた私は
急にソファーへと押し倒され、目の前には赤井さんの端正な顔があった。
「美緒が好きだからだ。」
『っ…』
「好きな女が泣いていたら優しくしてやりたくなる…
車で泣かれた時は困ったがな。」
『え…?どうしてですか…?』
「車を運転していたら
泣いてるお前のことを抱きしめてやれないだろう…
俺がどれほど悔しい思いをしたと思っているんだ。」
……。
あぁ…
本当にこの人はずるい…
そんな事を言われたら益々あなたに夢中になるのに…
赤井さんに思われてるのが苦しいくらいに伝わってきて…
嬉しくないはずがなく
止まっていた涙がまた溢れ出しそうになった。
「おい…もう泣くな。
キュラソーのことは…助けてやれなくて悪かった。」
『もう…違いますよ…。今は嬉しくて泣いてるんです。』
「…泣き虫だな。」
…赤井さんのせいなんですけど?
でも溢れ落ちそうな涙を指で掬う赤井さんの手つきは
やっぱりとても優しくて…
『赤井さん…
私…あなたの事すっごく好きです!』
「…っ、お前…
この体勢でそんな事を言って…
俺に何されても文句言えないぞ?」
『?分かってますよ?
傷が痛まなければ……抱いてください、赤井さん。』
「ふっ…傷の痛みなど気にならないくらい…
滅茶苦茶に抱かせてもらうさ。」
工藤邸には私達以外誰もいない…
私と赤井さんはそのままリビングのソファーで
何度も何度も…
愛を囁き合いながら抱き合った。