第30章 救済
side 安室
先日取り逃した銀髪の女…
彼女が東都警察病院に運ばれたと聞き、
本当に記憶喪失か確かめようと病院を訪れたが…
ベルモットに待ち伏せをされて、廃倉庫に拉致された。
あの女が警察庁から盗んだのは世界中のスパイのリストだ。
だから当然、僕の名前も載っていたし
組織に消されるかもしれないと覚悟していたが…
あの女はラムの腹心でコードネームはキュラソー…
どうやらキュラソーからの情報が完璧ではなかったようで
僕とキールの素性はまだバレていなかった。
だが、組織の幹部である長髪の男…ジンは、
疑わしき者は罰すると言い、拘束されている僕とキールに銃を向けてきた。
手は手錠をつけられ柱に回されている状態で
逃げることは不可能。
裏切り者だと認めろと言われたが、口を噤んでいると
カウントダウンをされ、残り数秒になった時
なぜか天井のライトが落ち、周りは暗闇に包まれた。
その隙に僕は自分の手錠を落ちていた針金で外し、倉庫内の物陰に隠れた。
そのまま息を潜めていると、倉庫の扉が開き
僕が逃げたように思った彼らの仲間の1人が外に出て行った。
そして残った彼らの元にラムから連絡があり
キュラソーの奪還を優先するようにとの指令が下った。
なぜそんな指令が…?と不思議に思ったが
どうやらラムの元にキュラソーからのメールが届き
僕とキールは裏切り者では無かったと書かれていたそうだ。
キュラソーはまだ警察病院にいたはずだから
そんなメールを送れるはずがない…
誰かが僕達を助ける為に動いていると分かったが
その正体を探るのは後にして、今はキュラソーを奴らに奪還されるのを阻止する方が先だ。
僕は倉庫を出て東都水族館に向かい、
その途中、公安の部下である風見に公衆電話から連絡を取った。
「はい、風見です。」
「僕だ…今話せるか?」
公安の部下達は、
事前に指示していた通りキュラソーを確保していた。