第29章 記憶
「蘭お姉さんにも連絡したら
小五郎のおじさんがレンタカー借りて
歩美達を送って行ってくれるんだってー!」
な、なんて利口な子供達なの…
私が風見さんと話している間にそこまで話が進んでいたなんて…
「観覧車からの景色を写真に撮って
みんなでねーちゃんに見せてあげようぜ!!」
『っ、え…?』
もしかして…
それが目的で水族館に行こうって言い出したの?
まさか子供達も…
私と同じようにあの女性と会えなくなるかもしれないって不安を感じ取ったのかな?
だから急に水族館に行こうだなんて…
本当にこの子達は優しくて思いやりがある…。
『ねぇ…一応聞くけど、みんなお父さんやお母さんには…』
「大丈夫です!さっき連絡しましたから!」
あはは…ですよね。そうだと思ったよ。
『よし!じゃあ先生も連れてってもらおうかな!
夜の観覧車なんてきっと綺麗だろうから
みんなでたくさん写真撮ろうね!』
「「「おー!!!」」」
そのままみんなで病院の前で待っていると
毛利探偵のレンタカーで拾ってもらい、私達は東都水族館へ向かった。
『毛利さん、わざわざありがとうございます。
私まで乗せて頂いちゃって…』
「いえいえ!こーんなに若くて
可愛い先生とドライブなんて光栄ですよ!」
『あはは、そう言って頂けて嬉しいです!
蘭ちゃんも久しぶりだね!』
助手席にいる蘭ちゃんに声をかけると
毛利探偵の発言に呆れているようだった。
「おっちゃん、先生を口説いても無駄だぞー」
「先生にはちゃーんと…」
「昴さんっていう恋人がいるんですから!」
『えっ!?』
「やっぱり若山先生と昴さんって
そういう関係だったんですね〜!!」
『違う違うっ!恋人じゃなくて友達だってば!!』
私の言う事を全然信じてくれない子供達に冷やかされながら車に揺られていると、窓から東都水族館の明るいネオンと観覧車が見えた。
…そういえば、赤井さんは今何してるんだろう。
スマホを見ても連絡は無く…
東都水族館に行く事をメールで知らせた方がいいか迷ったけど
仕事の邪魔になったら悪いので、私は自分のスマホをポケットの中にしまった。