第25章 紹介 ✴︎
そして、今日は金曜日ー…
仕事が終わったらそのまま工藤邸へ向かい
赤井さんと過ごす約束をしている。
自分のクラスの生徒達を見送った後、
今度の音楽会で弾くピアノの伴奏の練習をしようと思い
1人で音楽室を訪れた。
楽譜と睨めっこしながら練習をしていると、
音楽室の扉が開き、誰かが中に入って来たようだった。
「ごめんね先生、邪魔しちゃった?」
『ううん、大丈夫だよ!江戸川くん、私に何か用?』
江戸川くんは私のそばにテクテクと歩いて来たので
鍵盤から彼の方へ体を向けた。
「昴さんと付き合うことになったって聞いたから…
本当にいいのかなって確認したくて…」
『あーうん……
あの人と私が釣り合わないのは分かってる。』
「っ、いや…俺が言いたいのはそう言う事じゃ…」
『ううん、いいの。だって本当の事だもん。』
江戸川くんは少し困った顔をしていたけど
きっと私達のことを彼なりに心配してくれているんだろう。
『私はただの一般人だし
本当に恋人になってもいいのか昴さんに聞いたの。
そしたら側にいろって命令されたんだよ?
笑っちゃうでしょ。』
「ははっ、昴さんらしいね。」
『でもね、それがすごく嬉しかったの。
私を必要としてくれているみたいで…
私も昴さんと一緒にいたいって思った。』
私の言葉に黙って耳を傾けている江戸川くん。
しかし彼の表情はまだ曇っていた。
「でももし…先生の命が狙われたらどうするの?
きっとあの人は絶対敵に屈しないよ?」
江戸川くんのその言葉に私は驚いた。
だって彼は日本屈指の名探偵なのに
私の考えていることが読めてないんだから。
『敵に屈するような人だったら最初から好きになってないよ?
それに……私が例え命を狙われて殺されたとしても
あの人が無事なら喜んで自分の命を差し出せる。
それくらい…あの人のことが好きなんだ。』
赤井さんへの気持ちを江戸川くんに言うのは
少し恥ずかしかったけど…
彼にはなんとなく、私の本心を話しておいた方がいい気がした。