第24章 恋人 ✴︎
「わざわざ見送りに来てくれてありがとね、若山さん。」
『いえ!香坂先生にはお世話になりましたし
見送りに来るのは当然です!』
「でもまさか、あなたまで一緒とは思いませんでした。
沖矢さん、でしたよね?」
「ええ、そうです。」
私と昴さんは今
香坂先生を見送りに空港に来ている。
彼女は事件に巻き込まれたにも関わらず元気そうで
遺族が残したエッグが入った箱を大事そうに抱えていた。
「若山さん、パリに来た時は私のお店に来てね。」
『はい!もちろんです!』
搭乗時刻までの間、香坂先生との会話を楽しんでいると
彼女は急にとんでもない事を言い出した。
「沖矢さんと恋人同士になれたみたいで
よかったわね?」
『っ、違います!』「ありがとうございます…」
否定した私と、肯定した昴さん。
同時に言葉を発した私達は互いに顔を見合わせた。
「ふふっ、あらあら。
まだ2人は大事な話が出来ていないようね?」
香坂先生は私たちを見てクスクス笑っていると
時間になってしまったので私達に挨拶をしてから
搭乗入り口の方へと向かってしまった。
…そして残された私と昴さん。
なんだか昴さんは少し怒っているような雰囲気で
私はビクビクしながら彼の方を向いた。
『あの…昴さん…?
私達って恋人じゃ…ないですよね…?』
恐る恐るそう尋ねると、
昴さんは盛大にため息をついていた。
「まさかあなたがここまで鈍感だとは思いませんでしたよ。」
…はい?
なんで私が悪いみたいな風になってるの?
「とにかく、話は家に帰ってからにしましょう。」
『あ…はい、そうですね。』
私に呆れて歩き出した昴さんの後ろをついて行き
駐車場に停めてある車まで辿り着くと
昴さんのスマホが着信を知らせる音を鳴らしていた。