第22章 極秘 ✴︎
私が座っているソファーの斜め前にある1人掛けのソファーに座っている昴さんは
私が話し出すのを何も言わず待ってくれている。
勢いのままここに来ちゃったけど…
なんて切り出せばいいのか分からなかった。
座ったまま膝に置いている手に無意識に力が入る…
時計の秒針の音だけがやたら大きく聞こえて
ギュッと握られた自分の手を見つめていると、昴さんが立ち上がった。
「コーヒーでも入れましょうか…」
『っ、待って下さい!』
立ち上がった昴さんを引き止める為、
私は勢いよくソファーから立って昴さんの腕を掴んだ。
彼の顔を見上げると、少し驚いている様だった。
「…美緒さん?」
『コーヒーは…いいです。
何かを飲むと…言葉も一緒に飲み込んでしまいそうなので…』
昴さんの腕を掴んでいた手を離し
一度だけ深呼吸をして彼の顔をジッと見ながら私は口を開いた。
『今日は…助けて頂いてありがとうございました。
あの時の昴さん…とってもかっこよかったです…
まるで……赤井さん、みたいで…』
「…。」
『あなたは…昴さんじゃなくて……
赤井さん……ですよね…?』
久しぶりに赤井さんの名前を口にした。
ただ名前を口にしただけなのに
私の目からは涙がポロポロと溢れてしまった。
泣きたくなんかないのに…
まだ昴さんから何か返事があったわけでも無いのに…
名前を呼ぶだけで胸が苦しくて涙が出るほど
私はまだ赤井さんの事が好きなんだって実感した。
『違うなら…違うってはっきり…っ、言って下さい…
そしたらもう…二度と同じ事は聞きませんから…っ…。』
自分の手で涙を拭っていると手首をパシッと掴まれた。