第1章 前世
「副料理長、予約されていたお客様見えました。」
『了解です。前菜の準備ができたら声掛けますね。』
ここは東京都内にある某フレンチレストラン。
私、若山 美緒はこの店の副料理長として働いている。
高校を卒業した後、専門学校に通い調理師免許を取得。
その後フランスのパリで5年間修行し、
日本に帰国してからは
いつか自分の店を開くことを目標に
料理の腕を上げる為、日々勉強し精進している。
「若山、前菜終わったら明日の仕込み頼むわ。」
『それならもう終わってます!』
「早っ!じゃあ後は…」
『発注もやっておきましたよ!
今日は残業せずに帰りたいのて早めに色々終わらせました!』
私に頼み事をしてきた総料理長は
パリで修行していた私の腕を見込んで
副料理長にならないかとスカウトしてくれた人。
いつもお世話になっていて、いい上司って感じかな。
お客様が全員帰られた後でキッチンの片付けをしていると、アルバイトの女の子が店内の掃き掃除しながら私に話しかけてきた。
「副料理長!先週の土曜日のコナン見ました!?」
『あー…ごめん、録画したけど見てないや。』
「ええ!?今週は私の推しが出てたのにー!」
彼女はアニメ「名探偵コナン」の大ファンで
私も名前くらいなら知っているけど、漫画もアニメも映画もやっているらしいが一度も見たことはない。
とても有名なアニメだから物語のあらすじくらいは知ってるけどね?
『確か…赤井さんって人の推しだったよね?』
「そうですっ!いつもニット帽被っているんですけど
もう滅茶苦茶かっこいいんです!!」
…こんな感じでいつも推しのアニメキャラについて
熱く語られるから話についていくのが大変なの。
今もスマホの待ち受け画面を見せられてるし…
私は興味がないから何となくしか聞いてないけど
流石に何度も話されると自然に覚えてくる事もある。