第17章 相似
近い距離でとても目を合わせ続けてられなくて
顔を俯かせようとしたら昴さんは私の顎に手を添え無理矢理上を向かされた。
「目を逸らさないで下さい。」
『やっ…昴さん、待って…!』
昴さんの顔が徐々に近づいてきて
このままだとキスされると思うと途端に体が恐怖でガタガタと震え出した。
赤井さん以外の人とキスをするのが怖いなんて
みっともないと思われるかもしれないけど体はすごく正直だった。
恐怖を拭うようにギュッと目を瞑ると
いつもの優しい昴さんの声が降ってきた。
「…とまぁ、あまりにも無防備だとこういう目に遭うんです。
分かってくれましたか?」
『……。はい?』
昴さんは私からパッと手を離して距離をとっており
私は何が起きたのかまだよく分かっていなかった。
「美緒さんには口で説明しても分かってもらえなさそうだったので、多少強引かと思いましたがこういう方法で教えるのが1番かと。」
『…!!ちょっと昴さん!
私……本当に怖かったんですからね!?』
「元はといえばあなたが無防備に寝ているからでしょう。
これに懲りたら少しは気をつけることですね?」
『〜〜〜っ!!』
悔しいけど正論だから言い返せない!!
…でも待って。
一体どこからが演技だったの…?
どこからが本音でどこからが嘘?
頭の中がはてなマークでいっぱいになっていると
書斎の出口に向かって歩いていた昴さんが足を止めて私の方へと振り返った。
「さっき僕が言ったことは全部本音です。
でもあなたが嫌がるような事は2度としないので安心して下さい。」
…本音って……
えーーーー!?
『いや…あの……私…』
「返事はいりません。
あなたが大事に思っている人がいるのは知ってますから。
…それよりそろそろ帰らないと日が暮れますよ?」
『え……嘘!もうこんな時間!っ、お邪魔しました!』
一体どれだけ寝ていたんだ私は!!
昴さんにペコっと頭を下げてから
私は急いで玄関まで行き工藤邸を後にした。
帰り道、私の心臓はドキドキと音を立ててずっとうるさくて…
それから何日間かは
昴さんに言われた事が頭から離れなくて、思い出すと赤面する日がしばらく続いていた。