第17章 相似
『うーっ…寒いなぁ…』
私は今、昴さんが居候している工藤邸に向かっているところ。
今日は平日だけど、最近寒い日が続いていたせいで
私のクラスの生徒達の半数が風邪をひいてしまい急遽学級閉鎖となった。
授業が無くなった私は
そのまま事務仕事をしていても良かったんだけど
教頭先生から午後は休んでもいいと言われ、厚意に甘えて帰宅する事にした。
でも家に帰ってもやる事が無いので
帰宅途中に工藤邸に寄り、読み終えた小説を返して
また新たな小説を借りようと思ったんだ。
昴さんに連絡したら家にいるとの事だったので
現在、寒空の中を1人歩いている。
私と昴さんは大体週に一度、料理教室を開催しており
昴さんは時々、私を揶揄ったりするようなことを言うけど
なんだかそれにも少し慣れてきていい友人関係を築けている…と思う。
昴さんと知り合ってから日が経って
彼のお陰で料理をする機会も増えたし
以前のように赤井さんを思い出して1人で悲しむことも減った。
辛い事は時間が解決してくれるって言うけど…本当だな。
でも時々
無性に赤井さんに会いたくなるのは変わらない。
『もう2度と会えないのに…バカだよね…?』
私はまだ赤井さんのことを忘れられず
きっとこの気持ちだけは
何年経っても忘れる事はできないだろう。
感傷に浸りながら歩いていると工藤邸の前に辿り着き
呼び鈴を鳴らそうとしたら玄関の扉が開けっぱなしになっていることに気づいた。