第3章 場周
ピピッ
脇に入れていた体温計を取り出して
私は朝からガクッと項垂れた。
『39°って…道理で体が辛いわけだ…』
せっかくの休みなのに風邪でこんな高熱が出るなんて…
最悪だ、と思いながら、とりあえず薬を飲もうとしたけど
昨日の夜のうちに全て飲み切ってしまったことを思い出した。
『インフルエンザかもしれないし…
仕方ない、病院行くか…。』
今日は土曜で近くの病院は休診日。
私は車を持っていないし、バスに乗って総合病院に行こうと決め
着替えをしてから家を出た。
…こういう時、一人暮らしって辛いよね。
フラフラした足取りで近くのバス停まで歩き、
数分後にバスが到着したので乗車し一番後ろの席に座った。
前の方だと誰かに移してしまうかもしれないからね。
そのまま席に座ってバスに揺られていると
停留所に停まり、そこから聞いたことのある子供達の声が聞こえてきた。
「あれ?若山先生?」
「本当だ!若山先生っ!」
「なんか具合悪そうですけど…大丈夫ですか?」
声が聞こえた方向に目を向けると
そこには1年B組の江戸川君達がいた。
『あ、みんな…先生ね、
風邪引いちゃったみたいでこれから病院に行くの。』
「今日土曜だから大きい病院に行くんだね。
おい、オメーら。先生具合悪いんだから騒がずに静かにしてろよ?」
…こんな気遣いができるなんてやはり高校2年生なだけあるな。
どうやらみんなは引率者の阿笠さんという方と一緒にスキーに行くようで、その人も私と同じで風邪をひいているようだった。
横目でみんなが話している様子を見ていると
再びバスが走り出し次の停留所に停まると
複数のお客さんが乗車してきた。