第13章 病院
「僕は赤井さんと若山先生がどういう関係なのかは知らないし、2人のことに口を挟むつもりもないけど…
何も伝えられずに残された方って、すごく辛い思いをするんだよ。」
「…そうだな。」
俺の返事を聞いたボウヤは
それ以上美緒のことは何も話さなかった。
そしてそのまま2人で屋上から出て
水無玲奈を匿っている病室へ向かった。
実は彼女はCIAの諜報員で、組織に潜入しているスパイ。
すでに意識が戻っていた彼女に
再び組織に戻り探ってもらうよう頼み、
その情報をFBIにも流すように話をつけた。
「最後にもう一つ聞きたいことがあるんだが…
若山 美緒という人物を知っているか?」
「えぇ…この子の通う学校の先生でしょ?
一度会っただけだけど…それが何か?」
「ボウヤが彼女を組織の一員ではないかと疑っていたんでな。…これでアイツの潔白は証明されただろ?」
「う、うん…」
これでもう美緒が疑われることは無いだろう。
心配事が一つ消えたな。
ーーー…
そして翌日…
作戦通りに水無怜奈は組織に上手く奪還させたように見せかける事ができた。
これで彼女は組織に繋がるただの糸ではなく、
FBIの釣り糸にさせることに成功したが……
問題はこれからだ。
組織に戻った水無怜奈がそう簡単に組織に信用される訳がない。
…きっとすぐに俺へ連絡が来るはずだ。
杯戸中央病院の駐車場に停めていた自分の車で休息を取っていると、思っていた通り組織に戻った彼女から電話がかかってきた。
そしてこれから2人きりで会えないかと言われ電話を切った。
やはり…こうなってしまうんだな……
予想はしていたが、いざこの状況になると
俺にはまだ…覚悟が少し足りなかった。
俺の側で話を聞いていた上司であるジェイムズに
今後のことを説明した後、車で病院の駐車場を出た。
水無怜奈との待ち合わせ時刻まで、まだ少し余裕がある…
最後に心残りを晴しに行こうと思い車を走らせた。