第1章 1
・・・・好きだと。
ファンとしてだけではなく、一人の男性として彼のことが好きだと。
素直に伝えられたらどんなにいいかと心底思う。
彼の瞳を見つめながら、もしかすると彼も同じ心境なのではないかと思えてくる。
・・・いや・・・おそらく・・・同じ気持ちでいてくれるのが彼の視線から伝わってくる。
が、それだけだ。
既婚者の自分と既婚者の彼。
この関係が進展することはない。
そう結論に至り、小さくため息を吐いたのと同時に、下野さんも自嘲気味に小さくふっと笑い声を漏らす。
視線を外し、ちょっと投げやりな様子で髪の毛をかき上げた。
わたしはすっと右手を差し出す。
「下野さん・・・」
「ん?」
「ありがとうございました。この3ヶ月間、幸せでした。これからもずっと応援してます。頑張ってくださいね。」
「・・・・ん」
わたしの言葉に、下野さんがわたしの手をぎゅっと握り返してくれた。
「ありがとう。・・・また、いつか一緒に仕事ができたらいいね。その時は、情けない姿見せないように俺も成長できるように頑張るから。」
「はい。また、いつか。」
お互いに微笑み合い、わたしは夢の時間にさよならを告げた。