第1章 1
「どうしたんですか・・・・?こんな時間に・・・。打ち上げ、行かれたんじゃなかったんですか?」
「うん、行ったけど、みんな明日も普通に仕事だし、結構早めにお開きになったんだ。」
「そう・・・なんですね。」
「で・・・帰ろうと思ったんだけど・・・最後にもう一度だけ・・・君に会いたくなって・・・。聞いたら、まだここにいるってゆーからさ・・・待ってた」
下野さんがちょっと戸惑ったような、何かを決めかねているかのような複雑な表情を浮かべてわたしを見る。
わたしも彼の真意を分かりかね、首を傾げて彼を見つめた。
「えっと・・・ありがとう」
「え?」
「この3ヶ月間、ずっと励ましてもらってた気がして。・・・ちゃんと一緒に仕事ができてよかったし、楽しかった。ありがとう。」
「そんな・・・っこちらこそ、ありがとうございました!夢が・・・叶いました。」
優しい微笑みを浮かべてわたしを見つめる下野さんに、思わず涙がこぼれそうになる。
それを隠すようにわたしは深々とお辞儀をした。
「・・・顔上げて」
下野さんの声に、ゆっくりと頭を上げた瞬間。
我慢しきれなかった涙が一筋頬を伝った。
そんなわたしを下野さんはただ見つめていた。
わたしも下野さんの優しい瞳に魅入られているかのように彼を見つめ返す。
ただただ、言葉もなく、互いを見つめ合う。