第16章 伏黒甚爾 薬のチカラ
(あれ…。こっちであってるよね…?)
汗がへばりつく真夏の季節。
扇風機のまわる音と重なってうちわを仰ぐ。
「まだかー?」
「あっ、うん!いま持ってく!」
今日は遅くなるって連絡があったのに…。
恵の父である甚爾はお昼前には帰ってきて、一緒にそうめんをすする。
(ホテルに入れないから
協力してくれるって言ったのに…!)
「…?」
ジト目を向けると、しらを切った顔をしてきた。
でも前向きに考えればあの薬に即効性はない。
その間に恵と二人きりになって
ラブラブムードに持ち込めば…!
「おい恵。携帯鳴ってんぞ」
「あぁ…。はい、何すか」
着信相手を見るなり
恵はかったるそうに返事をしている。
今日は休日だって聞いていたのに…呪術師に休日は皆無。
「悪いなまえ…。折角来てくれたのに」
「ううん。全然気にしないで!気を付けてねっ」
「おう」