第12章 伏黒甚爾 感じる視線
(また…あそこにいる…)
出勤する朝の時間帯は見ないけれど、夜になると緑地公園の段差に男が座っている。
名前は知らないが、わたしは彼を知っている。
「…?」
目の前に立つと目つきの悪い視線を向けられる。
彼も、わたしを知っているくせに表情ひとつ崩さない。
「…帰る場所がないならうちに来なさいよ」
わたしの言葉に彼はようやく
ニヤついた笑みで返事をする。
一人暮らしのマンション。
男を連れ込んだら自分の身に何が起こるのか十分理解しているのに。
「っあ…!」
「不用心だな…鍵くらい自分で閉めろよ」
パンプスを脱ごうとしたら腰を抱かれる。
わざとらしく腰にぶら下げたものをお尻に擦りつけてくる。
「で、電気…つけたくて…」
「タイムロスだな。
見られたら恥ずかしい、電気消してって言うんだろ?
同じ手は二度も食わねぇよ」
耳の裏側をべろりと舐められる。
胸を鷲掴みにされて、太腿を撫でられて、身に覚えのある恐怖と快楽のうずがまく。
「くくっ、何日振りだ?俺にやらしーことされんの」